映画「サスペリア」観てきました。
ジャンルはホラーですが、オカルティズム、芸術、心理学、文化人類学など色んなジャンルの要素が沢山詰め込まれていて、とても見ごたえありました。
人間の心と身体、それぞれがもたらす、表現する「怖さ」がふんだんに盛り込まれていてなかなか怖かったです。魔術の分野もしっかり盛り込まれていて、私としては鼻息荒くなる内容でもありました。
そして「女性の生み出し、全てを飲み込む強さと怖さ」と「慈愛」といった女性性についても大きなテーマのよう。
キリスト教がまだ無い時代、土着の宗教では女性が子供を生み出す現象を豊穣の象徴として崇められてきました。信仰の大元が「自然」さらに繋がる「宇宙」でした。
自然は複雑で色んなものが影響し合い白黒つかないもの。
だからこそ多様な生き物が調和して生きることができる豊かな世界がある。
そのため多神教、一つの神ではなくインドのように色々な神が存在していたといわれています。
恵みと脅威という相反するもの両方を人間にもたらす自然は神であり、その神の力を収穫や子孫繁栄の恵みの方に向け、そして脅威はできるだけ少なくしてもらうために畏れ崇めるのでした。
男性を取り込み、新しい命を宿し生み出す女性はその自然の力を体現できる神聖なものとして崇められました。女神信仰と呼ばれるものです。
女性の神官、動植物など自然の一部を人の病や不調に役立てる賢女、新しい命を繋ぐ産婆さんなど女性は聖なる領域とこの世の仲介役とされていました。これが魔女の始まりとされています。
キリスト教が普及し始めると、土着信仰は異教=悪とみなされていきました。魔女狩りなどもあってだんだん魔女のイメージも恐ろしいイメージが加わっていきました。
これは女性の神聖な一面よりも、怖さ、不気味さ、忌むべきものに強調されていったたことが、キリスト教普及と共に強まったようにも感じます。キリスト教は一神教。神は神という存在だけ。それも父性、男性性の神です。女性性が優位な異教は悪魔の象徴ともされました。
映画の中でも大衆が抱く魔女の怖さ、不気味さみたいなものが事細かく演出されてますが、それは「魔女が怖い」というより、男女関係なく皆が持つ女性に対する恐れや怖さが表現されているようにも感じます。
色々な解釈を考えれたり、これはどうゆうことだったんだろう?という余白も沢山あるので、もう一度観たいのですが、グロテスクや血が苦手な方はご注意を。
そんな映画を妊婦が一人で観に行くってのもどうかと思うのですが(笑)
あと登場人物の名前を公式ページででもしっかり確認していけばよかったと少し後悔。時々あるんです、登場人物の名前を映画の中だけで覚えきれないという…
ドイツが分断されていた頃が舞台なのですが、登場人物が着ている洋服が皆さんとても素敵。こちらも映画を盛り上げる大事な要素でした。
写真は国立民族博物館の日本のしめ縄のコーナー。
このしめ縄も呪術のひとつですね。